経理お役立ちブログ

2025/3/3

東京プロマーケット(TPM)とは? 上場の仕組み・メリット・デメリットを徹底解説

「上場を考えているが、東京プロマーケットってなんだろう」「東京プロマーケットの上場基準や条件を詳しく知りたい」こんなお悩みはありませんか?

東京プロマーケット(TPM:TokyoProMarket)とは、東京証券所取引所が運営する株式市場を指します。

プロの投資家のみが取引できるため、一般株式市場とは大きな違いがあります。

本記事では東京プロマーケットの基本概要から他市場との違い・上場基準やメリット・デメリット、成功のポイントまで徹底解説します。この記事を読めば、東京プロマーケットについて理解し「自社にもっとも適した上場の選択肢なのか」を知ることができます。

ぜひ最後までお読みください。

 

東京プロマーケット(TPM:TokyoProMarket)とは? 

はじめに、東京プロマーケットの基本概要を紹介します。

 

東京プロマーケットの定義と特徴

東京プロマーケットとは「東京証券取引所(以下、東証)が運営する国内外のプロ投資家向けの市場」のことです。

 

大きな特徴は以下の2点です。

 

  • 上場基準が柔軟に設定されている
  • プロの投資家向けの市場である

 

プロの投資家とは「特定投資家」のことで、知識・経験・財産などから決定されます。

特定投資家には金融商品取引法上の一部規制が除外されます。

そのため一般投資家よりも柔軟な取引ができることが特徴です。

 

東証の他市場(プライム・スタンダード・グロース)との違い

東証の他市場との最も大きな違いは「参加できる投資家」と「形式基準」です。

「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」は「一般株式市場」と呼ばれる、特定投資家だけではなく一般投資家も参加できる市場です。

これらの市場に上場するためには株主数・時価総額・経常利益額などの「形式基準」をクリアしなければなりません。

しかし、東京プロマーケットはこれらの形式基準が大幅に緩和されており、他市場と比較して上場しやすいことが特徴です。

 

 

東京プロマーケットの上場基準・条件

東証の他市場と比較して、形式基準が緩和されていることから上場しやすい東京プロマーケット。

 

次にその上場基準やプロセス・ポイントについて解説します。

 

上場に必要な要件とプロセス

東京プロマーケットでは東証の他市場が設けている「形式基準」ではなく「J-Adviser制度」を使い、審査を行います

 

上場に必要な条件は以下の5点です。

 

上場適格性要件 J-Adviserによる調査ポイント
東証に相応しい企業であること ・法律体系・会計体系・税制等を理解しているか

・予算統制(年次/半期/月次等)が整備されているか

・上場予定日から12ヶ月間の運転資金が十分であるか など

事業を公正・忠実に遂行していること ・代表取締役社長及び役員の資質面に問題が無いか 

・代表取締役社長及び役員の資質面に問題が無いか など

コーポレート・ガバナンスや内部管理体制が整備されていること ・社内規程が整備され、適切に運用されているか

・事業運営及び内部管理に必要な人員が確保されているか など

・法令順守のための社内体制が整備され、適切に運用されているか

開示義務を履行できる体制を整備していること ・上場後の開示体制が整備され、開示規則・開示義務に対して十分な理解があるか 

・内部者取引及び情報伝達・取引推奨行為防止のための体制が整備されているか など

反社会勢力との関わりがないこと ・反社会的勢力との関係を有していないか

・反社会的勢力排除のための社内体制が整備されているか

・設立以降からの株主の異動状況を把握しているか など

 

これらのJ-Adviserによる上場適格性要件を満たして、はじめて東京プロマーケットへの上場が可能です。

 

そして東京プロマーケット上場に必要なプロセスは下記5つです。

 

  1. J-Adviser契約締結
  2. 上場準備 
  3. 上場審査
  4. 上場申請
  5. 上場維持

 

この5つのステップを完了するには、最低2年以上の期間が必要です。

 

少しでもスムーズに審査を終えるために会社の基本情報を整理したり、内部管理やコンプライアンス体制・決算/開示体制を整えたりしましょう

 

東京プロマーケットの審査に関する注意点

東京プロマーケットの上場審査を進める際の注意点は「必要経費の準備」です。

 

東京プロマーケット上場にあたっては、以下の費用がかかります。

 

  1. J-Adviserに支払う項目:上場までの準備指導や上場審査 など
  2. 監査法人に支払う項目:監査報酬 など
  3. 株式事務代行機関に支払う項目:株主名簿の作成や管理 など
  4. 印刷会社に支払う項目:発行者情報の作成サポート など
  5. 東証に支払う項目:新規上場料

 

上場までの準備期間や会社規模によって、具体的な金額は変化します。

 

ただし、一般的に東京プロマーケットへの上場には「2,000万〜4,000万円」がかかると言われています。
また、上場を維持するためにも一定のコストがかかります。

審査をスムーズにする書類・内部体制の準備だけではなく、資金調達も押さえておきましょう。

 

 

東京プロマーケットに上場するメリット・デメリット

東証の他市場と比較し上場基準が緩和され、独自の「J-adviserによる審査」がある東京プロマーケット。

 

本章では東京プロマーケットの上場のメリット・デメリットを解説します。

  • メリット1.信用力の向上につながる
  • メリット2.上場準備の負担が他市場より少ない
  • デメリット1.知名度向上の効果が限定的
  • デメリット2.資金調達が柔軟ではない

 

順番に見ていきましょう。

 

メリット1.信用力の向上につながる

ひとつめのメリットは「信用力の向上につながること」です。

 

日本には東証上場企業がおよそ4,000社しかありません。

これは全体の企業数:368万に対し、0.001%と非常に少ない数値です。

上場をすることで会社の内部統制・運営体制などがしっかりとしていることを外部に認められているため、金融機関からの信用度も上がります

その結果、今後の金融機関との融資交渉や取引先のさらなる拡大・売上アップに繋がります。

 

メリット2.上場準備の負担が他市場より少ない

ふたつめのメリットは「上場準備の負担が他市場より少ないこと」です。

東京プロマーケットの上場準備にかかる費用は、約2,000万〜4,000万円です。

しかし東証一般市場への上場には、会社の規模にもよりますが、およそ2倍以上の数千万円以上がかかると言われています。

また、金銭的負担以外にも形式基準の制限がなく、上場廃止になるリスクも少ないといえます。

東京プロマーケットへの上場前の監査期間は1年・一般市場は3年以上の業績安定であり、他市場と比較して東京プロマーケットは監査に関する負担も少ないです。

このようにピーディかつ低コストで上場を実現できることが、東京プロマーケットに上場するメリットです。

 

続いて、東京プロマーケットに上場するデメリットを見ていきましょう。

デメリット1.知名度向上の効果が限定的

一方で東京プロマーケットに上場するデメリットとして「知名度向上の効果が限定的であること」があげられます。

なぜなら東京プロマーケットは特定投資家のみ参加が可能であり、多くの一般投資家が参加できないからです。

東証一般市場は特定投資家だけではなく、個人投資家にも参加が可能であり、より多くの人に認知されやすいといえるでしょう。

しかし東京プロマーケットには個人投資家は参加できません。

2019年度の日本取引所のデータによると、個人株主数は5,672万人で、全体の97.5%を占めます。

この約9割の投資家が東京プロマーケットに参加できないことから、東京プロマーケット上場は知名度向上にはあまり効果がないと言われています

 

デメリット2.資金調達が柔軟ではない

もうひとつのデメリットは「資金調達が柔軟ではないこと」です。

東京プロマーケットは全体の約3%にあたる特定投資家向けの市場。

つまり東京プロマーケットに参加できる投資家数が大幅に限定されるため、柔軟な資金調達がむずかしい可能性があります

増資をしたくても投資家が十分に集まらず、十分な資金調達ができないリスクがあることは、東京プロマーケットのデメリットのひとつです。

 

 

東京プロマーケット上場企業の成功のポイント

東京プロマーケットにはメリット・デメリットがあります。

ではこれらの特徴を踏まえて、どんな企業に東京プロマーケット上場がおすすめなのでしょうか。

 

最後に成功事例から学べる成長戦略も紹介します。

TPM上場がおすすめの企業の特徴

東京プロマーケット上場がおすすめの企業の特徴は2つです。

  1. スピーディに上場し、信用を得たい企業
  2. 持ち株比率を維持したい企業

東京プロマーケットは審査期間が一般市場よりもみじかく、早く上場をできることが特徴です。

そのため「スピード感を重視して上場をしたい企業」「金融機関からの信頼を早く得たい企業」にはおすすめです。

また東京プロマーケット上場は、他の市場とはことなり、流通株式数・比率の要件はありません。

上場時に株式を手放す必要はないため「持ち株比率を減らしたくない企業」にも良いでしょう。

 

成功事例から学ぶ!TPMを活用した成長戦略

東京プロマーケットに上場し、成功した事例として「株式会社ニッソウ」の事例を紹介します。

ニッソウは不動産リフォーム業を営む企業で、2018年に東京プロマーケットに上場しました。

上場後も順調に成長を続け、2022年にはグロース市場への上場も達成しました。

ニッソウが成功した理由は「東京プロマーケット上場を機に体制整備をおこなったこと」です。

J-Adviserのチェック項目にもある「運営体制」「ガバナンス」を整えた結果、東京プロマーケットに上場後に金融機関だけではなく、外部からの信用力を獲得しました。

その結果、ニッソウは新卒・中途ともに優秀な人材を確保ができ、さらなる売上拡大に繋げました。

このように東京プロマーケット上場時に準備したことを活かし、売上アップへ大きな一歩を踏み出しています。

 

 

2024年12月には福岡プロマーケットを開設

2024年12月には福岡証券取引所が、福岡プロマーケットを開設しました。

東京プロマーケットと並んで、新たな上場の選択肢となります。

 

 

東京プロマーケットを活用して企業をさらに成長させよう

本記事では東京プロマーケットについて徹底解説しました。

 

東京プロマーケットとは

・東京プロマーケットとは「東京証券取引所(以下、東証)が運営する国内外のプロ投資家向けの市場」のこと

・形式基準ではなく独自のJ-Adviserによる審査が行われるため、よりスピーディー・低コストでの上場が可能

・東証の他市場に比べると知名度が上がりにくい

・東京プロマーケットで体制準備を整え、さらなる成長を目指せる

 

「自社のさらなる成長のために東京プロマーケットに上場したい」と感じたかたは、当記事を参考に準備してください。

「みんなの経理部」では東京プロマーケットの上場にあたって必要となる業務のアウトソーシングも提供しています。東京プロマーケットに上場したいけれども、十分な体制を作れない、というときはぜひアウトソーシングの活用も検討してください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。