経理お役立ちブログ
2023/2/1
属人化している経理業務の問題点とその対応方法
一般的に経理業務は属人化しやすいと言われています。経理人材が不足する昨今、経理業務が属人化してしまうと大きな問題が起こりかねません。今回は属人化している経理業務の問題点やその対応方法について解説します。
経理業務は属人化しやすい
属人化とは、「業務が特定の人の能力や考え方に依存していて、その人にしかわからない状態になっていること」をいいます。
そのため、人が変わると業務を継続するのが難しくなります。
経理業務で言うと、「××のことは○○さんしかわからない。」という状態で、大なり小なりそのような状態が生じていることは多いのではないでしょうか?
経理業務は次のような理由から特に属人化しやすい業務であるといえるでしょう。
<理由①>経理業務にかかるコストは安い方がいい
「経理業務は会社にとって大切な業務である」と頭の中ではわかっていたとしても、直接収益を生む業務ではないため、経理業務にかかるコストはできるだけ抑えたいと考える方も多いのではないでしょうか。十分な収益がない場合は、それも仕方のないことです。
属人化させないためには、分業や業務のローテーション、マニュアル作成などが必要となりますが、そのためには少し余裕のある状態が必要です。日々の業務に追われてしまうと、どうしても後回しになってしまいます。
しかし、中小企業・小規模事業者の場合は、経理部門を充実させて、少し余裕がある体制を構築することが難しく、特定の少数の人に任せがちです。つまり、属人化しやすい状態が生まれやすくなります。
<理由②>他部署とのローテーションが難しい
経理業務を行うには知識と経験が必要です。
これまでまったく経理を経験したことがない人が、他部署から経理部に異動となっても、何をしたらよいかわからない、という状態に陥るでしょう。
職種の適性もありますから、例えば営業部門や製造部門から経理部門への異動させようとしても、なかなかうまくいかないこともあるでしょう。
営業部門内であれば、営業一部から営業二部への異動や東京から大阪への異動などのパターンが考えられますが、それと比べると他部署から管理系の部門や管理系の部門から他部署への異動は難しくなります。
そのため、管理系の部門に一度配属されると、ずっとその部署のままということもよく起こります。他部署とのローテーションが難しい点も属人化しやすい理由の一つです。
<理由③>経理部門内でのジョブローテーションも難しい
先ほど説明したように、管理系のコストは少ない方がよいと考えられることが多く、経理部には必要最低限の人員が配属されることが多いです。
そのため経理部門内のメンバーは日々、業務に追われているような状況に陥っていることもよくあります。そのような状況の中で、業務分担の見直しをすると、余計な混乱を生みかねません。混乱を避けるためには、同じ人に同じことを任せておくことが無難です。
また、経理業務の内容によっては相当複雑で専門的な知識が必要となったり、会社の秘密情報を取り扱うこともありますから、専門性や秘密保持の観点で、業務分担の見直しが難しいということもあります。
同じ人が同じことをやっている状態から属人化が生まれてしまいます。
経理業務が属人化しているときの問題点
経理業務が属人化していると次のような問題が起こりやすくなります。
問題点1:担当者が退職すると業務が継続できなくなる
ある業務の進め方をその人しか知らない、という状態ですから、十分な引継ぎ期間がないままに、その人が退職することになると、その業務について誰もわからない状態になってしまいます。
退職後、どこまでやったかわからない、役所に提出が必要な書類が提出されていなかった、最終のデータがどこに保存されているかわからない、などはよく起こる問題です。
経理業務には期限がある仕事ばかりです。このようなことがあると期限内に必要な業務を終えることができなくなる可能性があります。
問題点2:横領などの不正が起こりやすい
経理業務はお金を扱う大切な仕事です。
属人化していて、特定の人が長期間にわたってお金を動かすことができる状態を作ると、横領などの不正が行われる可能性が生まれてしまいます。担当者は帳簿や書類を改ざんしたり、見つかりにくいタイミングを計ったり、チェックされないような工夫ができてしまいますから、横領が長期間判明せずに、損害額が巨額となることもあります。
もちろん信頼できるから任せているものと思われますが、誰もが不正を行おうとして会社には入ってきていません。不正は些細なきっかけで起こるもの。不正が起こる余地をなくしておくことが会社や従業員を守ることにもなります。
問題点3:非効率になっている可能性
特定の人が長期間継続して業務を行っている場合、その業務のやり方が最適なのかどうかの検証がされていないことになります。
「ITツールを使ったらすぐに済むことなのに、時間をかけて手作業で集計していた」「今は必要がなくなっているのに多くの時間をかけて行っていた」といったこともよく起こります。
属人化は非効率な業務を生むことにもなるでしょう。
経理業務が属人化しないために必要なこと
経理業務が属人化しないようにするためには次のようなことが必要です。
業務の棚卸し~マニュアル化を行う
経理業務のマニュアル化がされていない場合は、まずはマニュアルの作成を行いましょう。
マニュアルは最初から完璧である必要はありません。体裁などにこだわって完璧なものの作成を目指すと、いつまで経っても完成しないことになります。
まずは、経理部内のメンバーに、自身が担当している業務を洗い出し(業務の棚卸し)をしてもらい、それぞれの業務について箇条書きでもよいので業務の進め方をまとめてもらうようにしましょう。
誰がどのタイミングで何をしているかを把握することが、属人化から脱出する第一歩となります。
(関連記事)経理業務の属人化脱出の第一歩はマニュアル作りから
分業の体制を作る
基本的には一つの業務について2名以上が分業あるいは交代で行うような体制にしておくことが望まれます。そうしておけば、1名に何かあった場合でも業務を継続することができ、補充した人員に教えることができます。
人員の余裕がなかったとしても、業務の棚卸しを行った上で、業務内容を調整すれば、分業が可能となる可能性があります。
上長のチェックや承認機能を設ける
上長が必要なタイミングでチェックを行い、承認するような内部統制を設けることが必要です。業務の正確性を検証することもできますし、誰がAどのタイミングで何をやっていて、どのような成果物があるかを上長が把握することができます。
業務のローテーションを行う
定期的に経理部門内で業務分担のローテーションを行うとよいでしょう。
ローテーションを行うことにより、一人の人ができる業務が増え、ある人が退職したときも業務の継続性を確保することができます。また、違う人が業務をしたときに、改善が生まれる可能性もあります。さらに、できる業務が増えることは本人のモチベーションアップに繋がる可能性もあります。
経理業務のアウトソーシング(経理代行)を活用する
経理部内で分業やローテーションをする体制が作れないときは、外部にアウトソーシングすることも有効です。経理業務のアウトソーシング(経理代行)をうまく組み込めば分業やローテーションと同じ効果を期待することができます。
(関連記事)必要に応じて使える経理業務のアウトソーシング(経理代行)
(関連記事)経理業務をアウトソーシングするメリット・デメリット
まとめ
この記事で解説したように経理業務が属人化すると大きな問題が起こる可能性がでてきますから、そのような状況に陥っているときは何らかの対応が必要です。自社内で対応できないときは経理業務のアウトソーシング(経理代行)の活用も検討するとよいでしょう。