経理お役立ちブログ
2023/1/25
上場会社が経理業務をアウトソーシングするときのポイント
上場会社や上場準備会社は経理業務のアウトソーシングをすることができないと思われている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。今回は上場会社や上場準備会社が行う経理業務のアウトソーシングをするときのポイントについて解説します。
そもそも上場会社でも経理業務のアウトソーシングは可能なの?
上場会社や上場準備会社が経理業務をアウトソーシングすることはできないと思われている方もいるかもしれません。確かに、上場会社が経理業務をアウトソーシングする際には様々な点に注意する必要がありますが、アウトソーシングすることは可能ですし、大きなメリットもあります。
上場会社の経理業務アウトソーシングが難しい理由
上場会社は経理業務をアウトソーシングすることもできますが、非上場会社と比べると難しい面もあります。
理由1:上場会社の経理業務は専門性が高い
上場会社は規模も大きく、上場企業が適用すべき会計基準に準拠して会計処理を行い、税務申告をすることになりますから、それだけの専門知識が必要となります。会計基準や税制は頻繁に改正されるためにキャッチアップしていかなければなりません。さらに、決算短信や有価証券報告書などの開示資料の作成や監査法人対応などを四半期ごとに行わなければなりません。
業務の専門性が高いことから、綿密な計画なしにアウトソーシングする訳にはいきません。
理由2:上場会社は秘密保持が特に重要である
証券取引所において日々、株式が売買される上場会社の財務情報は極めて秘密性が高く、意図しない形で外部に流出すると大きな問題となります。
そのため、上場会社は特に秘密保持を徹底する必要があります。
アウトソーシングをする場合は、情報を取り扱う者が増えることになるため、よりしっかりと情報を管理する必要があります。
理由3:財務報告に係る内部統制の評価や監査が必要である
上場会社は財務報告に係る内部統制の評価を行い、監査法人の内部統制監査を受けなければなりません。財務報告に関わってくる部分についてアウトソーシングする場合には、内部統制の評価の対象となりますから、評価や内部統制監査のことも考慮しなければなりません。
上場会社が経理業務をアウトソーシングするメリット
上場会社の場合はアウトソーシングすることが難しい面もある一方で、大きなメリットもあります。
メリット1:専門性の高い要員を常時雇用する必要がなくなる
上場会社で専門性が高い業務が集中するのは、四半期決算や年度決算のタイミングになります。大規模企業でなければ、それ以外の時期は手を余してしまうかもしれません。
しかし、専門性が高い要員を直接雇用すると、年間を通じて高額な給料等を支払う必要があります。この点、専門性の高い業務が必要となるタイミングでアウトソーシングすれば、コストを抑えることが可能となります。
メリット2:上場会社の経理実務に通じた人材を探す必要がなくなる
専門性が高い上場会社の経理実務に通じた人材は不足しています。ひとたび、キーパーソンが退職することになった場合、同等のスキルを持った人材がなかなか見つからない可能性もあります。
上場会社の場合は、3ヶ月毎に四半期決算がやってくるため、悠長に人材を探す時間もありません。
この点、アウトソーシングすれば、そのような心配はなくなります。
メリット3:一部の経理業務についてアウトソースすることができる
例えば、社内に連結決算業務を行う十分な体制を構築することができない場合に、連結決算業務のみをアウトソースするということも可能です。
このように自社のリソースが不足している業務についてアウトソースで補完することによって、全体をうまく回すことも可能となるでしょう。
上場会社が経理業務をアウトソーシングするときの注意点
では、上場企業が経理業務をアウトソーシングするときにはどのような点に注意すればよいのでしょうか?
注意点1:サービスが安定して提供できる先かをチェックする
上場会社の場合、3ヶ月毎に四半期決算を行う必要があり、期限までに書類を提出しなければ大きな問題となります。アウトソーシング会社が、安定してサービスを提供できる体制が整っているかどうかを確認しましょう。
注意点2:上場会社の対応を行っているか
やはり上場会社の経理実務は専門性が高いため、アウトソーシング会社が上場会社のアウトソーシングの実績を持っているかどうかを確認しましょう。
専門性の高い業務をアウトソースする場合は、担当者が公認会計士の資格を持つ者か上場企業の経理実務を十分に積んだ者でなければ難しいと思われます。
注意点3:情報管理体制をチェックする
先ほど説明したように上場会社の場合は、特に慎重に情報を取扱わなければなりません。そのため、アウトソーシング会社の情報管理体制についても確認するようにしましょう。
また、契約を締結する際は、守秘義務に関する条項を入れておくようにしましょう。
注意点4:内部統制が必要となる
財務報告に関わってくる部分についてアウトソーシングする場合には、内部統制の評価及び監査の対象となります。内部統制の評価や監査を考慮した業務フローを設計する必要があります。
注意点5:業務をコントロールする管理者が必要
規模の大きな会社ほど業務量が多く、スケジュールに沿って、役割分担をして業務を進める必要があります。アウトソーシングする場合も、責任者が業務をコントロールして進めていく必要があるでしょう。
まとめ
今回は上場会社や上場準備会社が行う経理業務をアウトソーシングするメリットや注意点について解説しました。確かに注意しなければならない点はありますが、ポイントを抑えた上でアウトソーシングをすれば、決算経理業務を行う体制を大幅に強化することもできるでしょう。