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2023/5/9
2023年(令和5年度)度税制改正で電子帳簿保存法はどう変わる?
2023年(令和5年度)度税制改正で電子帳簿保存法関係の改正が行われています。スキャナ保存制度の要件の緩和や電子取引データ保存ルールの猶予規定が創設されるなど従来よりも使いやすくなる改正となっています。今回は、2023年(令和5年度)度税制改正での電子帳簿保存法関係の改正について解説します。
優良な電子帳簿の範囲が明確化・合理化されます
パソコンを使って自身で一貫して作成する帳簿書類については、一定の要件のもと、事前の届出なしに、電子データで保存しておくことが認められています。
例えば、会計ソフトを使って総勘定元帳を作成しているような場合、一定の要件を満たしていれば、印刷しなくても、会計データのまま保存することができます。
さらに、その帳簿が、優良な電子帳簿の要件を満たしている場合には、後からその電子帳簿に関連する過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減されるという特典が設けられています。
この優良な電子帳簿の範囲が明確化・合理化されました。
改正前は、仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿すべてとなっていましたが、その他必要な帳簿が限定されることとなりました。
改正後の優良な電子帳簿の範囲
①仕訳帳
②総勘定元帳
③その他必要な帳簿
・売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、賃金台帳(所得税の場合)
・受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、有価証券受払い簿
・固定資産台帳、繰延資産台帳 等
この改正は、2024年(令和6)年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税から適用されることとなります。
スキャナ保存制度の要件の緩和が行われます
スキャナ保存制度の保存要件について、次のように改正されました。
⑴ スキャナの読み取り情報の保存が不要に
スキャナの読み取り情報(解像度・階調・大きさに関する情報)の保存を必要とする要件が廃⽌されました。ただし、スキャナで読み取りに求められる解像度(200dpi 以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件に変更はありません。
⑵ 入力者等情報の確認要件が不要に
スキャナ保存時に記録事項の入力者などの情報を確認できるようにしておくことを求める要件が廃⽌されました。
⑶ 帳簿との相互関連性確保の要件が重要書類に限定される
スキャナで読み取った際に、帳簿と相互にその関連性を確認できるようにしておく必要がある国税関係書類が、重要書類に限定されることとなりました。重要書類とは、契約書・領収書・送り状・納品書等のように、資金や物の流れに直結・連動する書類をいいます。
この改正は、2024年(令和6)年1月1日以後に保存が行われる国税関係書類から適用されることとなります。
電子取引データ保存ルールの猶予規定が設けられます
取引先からデータで書類を受領した場合は、電子取引データの保存ルールに従って、電子データを保存しておく必要があります。
原則的な保存ルールは次のとおりで、4つの要件すべてを満たす必要があります。
①データ改ざん防止のための措置(タイムスタンプ付与、履歴が残るシステムでの授受・保存、改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守るなど)を講じること。
②「⽇付・⾦額・取引先」でデータを検索できるようにすること。
③ディスプレイやプリンタを備え付け、いつでもデータを確認できるようにすること。
④システムのマニュアル、手順書などを備え付けておくこと。
今回の改正によって、電子取引データを原則的なルールで保存することができなかったことについて相当の理由がある事業者等に対して新たな猶予措置が講じられることとなりました。なお、事前手続きを行う必要はありません。
<猶予措置の内容>
次の3つの猶予措置の要件を満たす場合には、原則的な保存方法によらず、電子取引データの保存することが認められます。
①相当の理由があること
②税務調査等の際に電子取引データの「ダウンロードの求め」に応じることができること
③税務調査等の際にプリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じることができること
この猶予措置を使えば、実質的に、データを削除せず、プリントアウトしておけば、問題がないこととなります。
なお、2023年12月31日までは、宥恕措置により、実質的にプリントアウトして保存しておくことが認められていましたが、同期限をもって宥恕措置は廃止となります。
また、一定の要件を満たす者については、原則的な保存ルールのうち、検索機能確保の要件(「⽇付・⾦額・取引先」で検索できるようにすること)が不要となります。この対象者が
拡大され、次のようになりました。
この改正は、2024年(令和6)年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税から適用されることとなります。
まとめ
2023年(令和5年度)度税制改正での電子帳簿保存法関係の改正について解説しました。
特に電子取引データに関しては、宥恕規定の期限切れ後の原則的なルールでの対応に苦慮されていた中小企業も多かったと思われますが、新たに創設された猶予措置であれば対応することもできるでしょう。とはいっても、電子帳簿保存法はまだまだ複雑な規定が多く残っています。経理のDX化を進めるためにも、今後も電子帳簿保存法の改正が行われ、利用しやすくなっていくことが望まれます。
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