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2022/9/15

電子帳簿保存法とは?内容や対応の要点を分かりやすく解説します

2022年1月に電子帳簿保存法の改正が行われ、話題を呼びました。しかし、「耳にしたことはあるけれど、実はよくわかっていない…」という経営者や経理担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の改正は、一部の書類の電子保存が義務化されるなど、電子帳簿保存をさらに推進させるものです。また、保存の要件が緩和されて従来よりも電子保存のハードルが下がっているため、電子保存を導入して業務効率化を行うチャンスでもあります。難しく考えすぎず、ぜひ読んでご参考にしてください。

 

 

電子帳簿保存法とはどんな法律?

電子帳簿保存法は、国税に関する帳簿・書類について、電子データでの保存を認める法律です。「原則は紙での保存であり、データ保存はあくまでも例外」という位置づけで制定されました。最初の施行は1998年と、意外と前からある法律です。紙での保存や印刷にかかる手間・コストなどの削減を目的に制定されているため、ぜひ取り入れて業務効率化や生産性向上に役立てたいものです。

 

2022年1月の改正によって、電子保存の要件が緩和され、義務化されるものも加わりました。すなわち、例外であるはずのデータ保存を推進する流れが強くなっており、これは今後も続くと考えられます。そのため、長期的に考えると、早い段階でデータ保存に対応できる体制を取ることで、今後の法改正や時代の流れに柔軟に対応できるでしょう。

 

電子帳簿保存法の対象書類は?

電子帳簿保存法の対象となる帳簿や書類には、以下のものがあります。

【帳簿】

・総勘定元帳

・仕訳帳

・現金出納帳

・売掛金元帳

・買掛金元帳

・固定資産台帳

・得意先元帳

・仕入先元帳 ほか

 

【書類】

・棚卸表

・貸借対照表

・損益計算書

・納品書

・請求書

・領収書 ほか

 

対象書類は「国税」に関するものとされていますが、取引を証明するものや、それに基づく記録はすべて国税に関わってくるため、「取引に関する書類」すべてを対象として考えておくといいでしょう。

 

 

3つの保存方法

電子帳簿保存

電子帳簿保存法で認められるデータ保存の方法は3つあります。一つ目は、「電子帳簿等保存」です。会計ソフトなどで作成した書類は、紙に出力せずデータのまま保存してもいいという内容です。具体的には、各種帳簿や決算書類のほか、会計ソフト上で作成した請求書や納品書なども含まれます。

 

スキャナ保存

二つ目は、「スキャナ保存」です。紙で作成・受領した書類を、スキャンや撮影によって画像データにして保存できるという内容です。身近なものでは、手書きなどで作成した発注書や請求書、紙で受け取った納品書や請求書、領収書等が挙げられます。

 

電子取引データ保存

三つめは、「電子取引データ保存」です。メールやインターネット上でやり取りを行うことを「電子取引」と呼びますが、この電子取引で受領した書類はデータのまま保存できるという内容です。具体的には、メールで受け取った納品書や請求書、インターネット上の専用プラットフォームからダウンロードした利用明細や請求書などがあります。

 

 

何が変わった?

では、2022年1月の改正で具体的に何が変わったのか見ていきましょう。改正内容は、大きく次の2つに分けられます。

 

  1. 要件緩和

これまで電子データでの保存を行うには、手続きや細かな仕組みづくりが必要でした。しかし今回の改正ではそれらが廃止・緩和され、データ保存がしやすくなりました。主な変更点は以下のとおりです。

 

・データ保存をする場合の税務署への事前申請・承認が廃止された

・検索要件が少なくなり、「取引年月日」「取引金額」「取引先名」の3点に絞られた(スキャナ保存・電子取引データ保存)

・タイムスタンプの付与期限が長くなった(スキャナ保存)

・不正防止のための「適正事務処理」が廃止された(スキャナ保存)

・税務職員の求めに応じで必要な帳票・書類をダウンロードできるようにしていれば、最低限の要件を満たす場合でも電子保存が可能になった

 

 

  1. 電子取引データ保存が義務化

ほかの2つの方法と違って、電子取引データ保存は2022年1月の改正で義務化されました。そのため、メールやインターネット上で受け取った書類は、印刷して紙で保存することが認められなくなったのです。印刷したものをスキャンし直すことも認められないため、一定のルールのもとに、受け取ったそのままのオリジナルのデータを保存しておく必要があります。

データはただ保存しておけばいいという訳ではなく、決められたルールの下に保存しなければなりません。その準備に時間がかかるため、電子取引データ保存には2023年12月31日までの2年間の猶予期間が設けられています。「準備が間に合わない」といったやむを得ない理由があれば、当面の間は印刷したものの保存も許容されます。ただし、2024年1月までには対応できる体制を整えておかなければなりません。

 

 

何をすればいい?電子帳簿保存法への対応

それでは、具体的に何をすればいいのでしょうか。早めに済ませておきたいのは、二つ目の「電子取引データ義務化」への対応です。保存のためには要件があり、「真実性」と「可視性」を満たす形で保存する必要があります。

 

  1. 「真実性」とは

その取引が本当に存在したか、具体的にいつ発生したかを担保するものです。以下のいずれかを満たしていれば良いとされています。

 

  • タイムスタンプが押された後のデータを授受する
  • データを受け取ったら速やかにタイムスタンプを付与する
  • データの削除・変更の履歴が残る、または削除・変更のできないシステムを使う
  • 訂正や削除を防止するための事務処理規定を備え付ける

 

タイムスタンプとは、ある時点でそのデータが存在していたことや、以降の変更が行われていないことを証明するものです。タイムスタンプを利用するには、対象書類を専用のシステムにアップロードして、認定を受けているタイムスタンプ事業者によって付与される必要があります。利用には費用がかかり、初期導入費用、利用数に合わせた費用、月々の定額料金など、事業者によって料金設定は異なっています。従来は、データ保存を行うには必須でしたが、今回の改正でタイムスタンプの要件が大幅に緩和され、必ずしも導入する必要はなくなりました。

 

  1. 「可視性」とは

いつでも必要なときに検索してそのデータを特定し、閲覧できることです。以下の3点をすべて満たしておく必要があります。

 

  • 利用する会計ソフトなどのシステムの概要書を備え付けること
  • パソコン、ディスプレイ、プリンタ、操作マニュアルなどを保存場所に備え付け、画面や書面に必要な情報を明瞭に出力できること
  • 検索機能を確保すること

 

データを問題なく読むことができるのはもちろん、すぐに探し出せるようにしておかなければなりません。そのため、ファイル名の付け方に規則性を持たせて検索できるようにする、専用システムを利用するといった対応が必要です。なお、税務職員の求めに応じて必要なデータをすぐに出力できるようにしておけば「最低限の要件」が適用され、検索機能のない場合も許容されます。

 

 

今後の見通し

2023年10月には「インボイス制度」も始まります。インボイス制度は消費税の納付に関わる制度です。会社が事業を行って売上を得ると、一緒に消費税も受け取ります。この消費税は納付する必要がありますが、仕入にかかった消費税を控除できます。しかしインボイス制度開始後は、規定に沿った請求書でないと仕入にかかった消費税の控除が行えなくなるのです。

 

インボイス制度開始後は、電子取引で受け取った請求書は電子帳簿保存法に従って取り扱わなければなりません。この点を見越した上で、電子取引データ保存は2022年1月に義務化されました。書類の電子データでの取り扱いは、今後もますます主流となっていくと見込まれます。

 

 

まとめ

電子帳簿保存法は、ペーパーレスを推進して業務効率化や生産性向上を目指すものです。当初は例外を認めるものでしたが、現在は国を挙げてペーパーレス化や電子化に舵を切っていると言えます。電子保存は準備や環境の整備に手間はかかりますが、導入すれば長く活用できます。今後も最新の情報に注目し、「知らなかった…」と後悔しないように先手を打って電子化を進めていきましょう。